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小型原子炉とは?

2004年10月15日沖縄電力首脳が、沖縄に原発を設置することについての検討に言及しました。沖縄電力が提示する小型原子炉は、残念ながらまだ世界に存在せず、国民的議論に至る状況ではありませんが、そもそも小型原子炉とはいかなるものなのでしょうか。

小型原子炉は慣例的に出力60万キロワット以下の原子炉です。特に研究中のものについては革新的小型炉と呼ばれ、単に小さい研究用の原子炉とは区別されています。

商用炉に使用されている100万キロワット以上の原子炉では、原子炉容器が大きく、原子炉停止後、崩壊熱除去のために原子炉内をポンプでかき混ぜつづける必要があります。

それに対して、小型原子炉では温かい水が上に行き、冷たい水が下に行くという自然対流によって、自然冷却のみで炉心を冷やすことができます。これにより原子炉の機器の故障確立を従来の一万分の一から十万分の一に減少できると試算されています。人が手をつけずにほおっておいても勝手に安全な状態になることから「受動的安全性」と呼ばれます。

将来像のひとつとして、船で運べる原子炉が提案されています。この場合、定期検査のときは原子炉を工場に運び入れればよく、整備のための重機や人の輸送を必要としません。、その間は代車ならぬ代炉と交換するだけという原子炉のリース販売ができるというものです。

欠点としては、大型よりも発電効率が落ちることが挙げられますが、緊急用の装置の減少とともに点検箇所が減るため、十分元が取れるとも言われています。


社会的な観点から見た小型原子炉の立場

日本では、原子炉の設置に許認可制度を敷いているため、複数の原子炉による大電力を必要とする場合に原子炉の数が増えてしまい、手続きが煩雑になります。また、リースとなった場合に複数の原子炉が規制対象となるため、現行の法律では限界があります。

小型原子炉は場所をとらない、移動を前提とした設計もできるため、東京に原子炉を作らない理由がなくなるという問題があります。2002年、石原東京都知事が原子炉を東京に誘致してもよいとする発言をし、東京を中心に原発反対運動が起きました。一連の社会現象の背景には、実は小型原子炉の発明があると言っても過言ではありません。

原子炉立地にかかる10年以上もの時間に比べれば、小型原子炉の開発研究はまだ始まったばかりに過ぎません。2004年現在存在していない原子炉を、頭から拒否するのではなく、自分の問題として基本的な知識を身につけることがなにより大切ではないでしょうか。


もっと勉強するための参考リンク

http://www.atom.meti.go.jp/siraberu/qa/00/kaihatu/20-032.html

http://www.jaeri.go.jp/jpn/open/press/2001/010704/

http://www.nr.titech.ac.jp/~kato/Research/Titan/titan.htm


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