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原子炉の種類と歴史

原子炉の中にあるものは主に以下の5つです。

原子炉の中 一般的なものに例えると・・・
核燃料
核反応を起こすための減速材 反射板
徐熱を行う冷却材 水の入ったヤカン
核反応を止める制御棒 通気口のふた
これらを支える構造材 かまど

これらを変化させ、組み合わせることでさまざまな原子炉を作ることが出来ます。ここでは原子炉の種類を歴史を追ってご紹介します。


コールダーホール(黒鉛減速ガス冷却炉)
黒鉛を使用していることから、天然ウランを使えます。軽水炉に比較すると、取り出せるエネルギーは少なくなります。1966年に日本に導入された最初の商用原子炉でもあります。

原子炉の中 コールダーホール
核燃料 天然ウラン(金属)
核反応を起こすための減速材 黒鉛
徐熱を行う冷却材 二酸化炭素
核反応を止める制御棒 ホウ素材
これらを支える構造材 マグネシウムなど

黒鉛減速炉

黒鉛減速炉は天然ウランが濃縮なしでつかえる非常に安価な原子炉です。エネルギーを潜熱の大きい水で取り出すため、コールダーホールよりはるかに高効率です。チェルノブイリの原子炉はここに属します。経済性を最優先にした究極の原子炉と言えるでしょう。

原子炉の中 黒鉛減速炉
核燃料 ウラン(金属)
核反応を起こすための減速材 黒鉛
徐熱を行う冷却材
核反応を止める制御棒 ホウ素材
これらを支える構造材 鉄など

軽水炉

チェルノブイリでは黒鉛が火災を起こし、災害を拡大しましたが、減速材に水を使うので火災の心配はなくなります。しかし、中性子の吸収が黒鉛に比べて大きく、天然ウランを使うことができません。そのため、核分裂性ウランの濃度を高くする濃縮作業が必要になります。現在日本の商用炉はこの型のみです。

原子炉の中 軽水炉
核燃料 磁器ウラン(酸化ウラン)
核反応を起こすための減速材
徐熱を行う冷却材
核反応を止める制御棒 ホウ素材
これらを支える構造材 ジルコニウムなど

さらに細かく分けると2つに分かれます。

● PWD
沸騰により気泡が出ないように加圧しています。ゆれても気泡によって出力が変わることがないため、潜水艦や空母用に開発されました。放射能が漏れにくい分、配管に高い負荷がかかると言う欠点があります。

● BWD
米国のGEという民間会社がPWDを元に独自開発した原子炉です。沸騰すると核反応が起きにくくなるという性質を利用して安全性を高めています。

核反応が増える->温度が上がる->気泡が発生し、核反応が減る

という原理です。しかし放射能を含む発生した蒸気でタービンを回して発電するため、放射能汚染範囲が広い、放射能漏れを起こしやすいという欠点があります。


重水炉

この世には同じ水の中でも、重さが10:9と、普通の水より少しだけ重い水が存在します。その重い水を濃縮し冷却水に用いた原子炉です。天然ウランを燃やすことができます。軽水炉で使い終わった燃料をさらに燃やすことも出来るのですが、重水の値段が高いため日本では実用化されていません。なお、カナダ、韓国では商用炉CANDOが稼動しています。

原子炉の中 重水炉
核燃料 磁器ウラン、MOX、天然ウラン
核反応を起こすための減速材 重水
徐熱を行う冷却材 重水
核反応を止める制御棒 ホウ素材
これらを支える構造材 ジルコニウムなど

高温ガス炉

二酸化炭素ではなく、ヘリウムを使うことで高温を達成する原子炉です。日本原子力研究所で主に水素製造目的として研究されています。燃料が直接セラミックスに包まれている形状から放射能汚染が置きにくいという性質があります。

原子炉の中 重水炉
核燃料 磁器ウラン、MOX、天然ウラン
核反応を起こすための減速材 黒鉛
徐熱を行う冷却材 ヘリウムガス
核反応を止める制御棒 必要なし(燃料を簡単に取り出せるため)
これらを支える構造材 SiCセラミックスなど

溶融塩原子炉

燃料が炉心に流れることで、再処理燃料交換が一ヶ所で行えます。燃料は常温で固体であるため、放射能汚染が置きにくいという性質があります。

鉛ビスマス炉

上記の原子炉では核反応を起こせない物質でも核反応を起こすことができるます。鉛ビスマスは腐食性であるため、耐腐食材料の研究が行われています。同時に非常に重いため、巨大化が難しいという状況です。

低減速軽水炉

水という広く使われている物質を使い高速炉を作るものです。材料腐食の低減を中心に研究が行われています。

核融合炉

現在核融合が持続しないため、エネルギー出力はありません。


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